電子書籍どうでしょう

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制作途中でキャンセルとなった場合の対応で揉めたら弁護士さんに頼みましょう

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先日、仕事仲間のAさんと飲みに出かけたのですが、他人事とは思えない興味深いお話を聞いてきました。もちろんブログに掲載する許可を得ていますし、この文章内容で間違いないか確認していただいてます!

 

 

1. 序章 制作依頼〜ホームページ制作

 

ある日、Aさんが運営するホームページにあるメールフォームからホームページ制作の依頼がありました。制作依頼をしたのがB氏とします。

 

B氏はAさんのホームページを見て、メールフォームに必要事項を入力して依頼してきたそうです。

 

ホームページの内容は言えませんが、とくかくボリュームがあって、ページ数的には『数百ページ(主に表組)になるホームページ』だそうです。そしてIDとパスワードで制限する月額の会員制のホームページにしたいとこのことです(ベーシック認証で対応)。

 

『数百ページになるホームページ』と言っても文字原稿をExcelに落として、それをHTMLに変換するので一発なのですが、ほとんどの制作時間が『文字原稿のExcel化』に費やされることになります。

 

なんと言ってもB氏がWordにて作成した文字原稿が厄介で、tab区切りせずにスペースで空白を調整してあるので、そこを修正するのに莫大な時間がかかるそうです。

 

そこで算出した制作料金が50万円、制作期間は「1ヵ月〜」というコトになりました。

 

B氏は他のWEB制作会社などにも見積りを依頼していたらしく、他社よりも安く制作してくれるAさんにメールで制作依頼としてきたそうです。

 

B氏が個人ということもあり、前金として半額(25万円)を入れてもらってから制作を開始したそうです。

 

まずはデザインや構成などをAさんから提案し、B氏の承諾を得てから制作に取りかかりました。

 

『文字原稿のExcel化』で一発HTML変換と言っても『数百ページになるホームページ』ですから、ある程度で区切りをつけてHTML変換して行きます。

 

HTML変換したあとはWEB上でB氏が校正・確認などをしてもらい、赤字などの修正も入れていきます。

 

メインページ・索引ページはほとんど完成、大量にある表組が約4分の1ぐらい制作が進んでいる段階で、B氏からストップがかかりました。

 

 

 2. フォントの問題

 

B氏から制作のストップがかかった理由は「WEBを閲覧する端末によってフォントが変わってしまうのが納得いかない」とのことです。

 

ご存知の方も多いと思いますが、ホームページはCSSの設定でフォントを指定することができます。ただしそのフォントが端末にインストールされていなければ指定通りのフォントで表示されることはありません。よって「MSゴシック」「MS明朝」などを指定していることが多いです。

 

つまりB氏のホームページを閲覧するには、予め指定のフォントをインストールしてもらうことが条件となりますが、そのフォントはフリーではないため「ほぼ不可能」です。

 

このフォントの件に関しては制作開始前の打ち合わせの段階で確認済みでしたが、実際にB氏がWEB上で確認したら「やっぱり指定のフォントでなければならない」という考えに変わったそうです。

 

 

 

3. 制作依頼内容の変更とキャンセル

 

そこでB氏が改めて提案してきたのは「表組ページはPDFで閲覧させる」ということでした。

 

確かにPDFならフォントの埋め込みが可能ですから、フォントの問題は解決できます。
さらに月額会員制ホームページをヤメて、そのPDFをDLマーケットなどで販売するという変更を申し出てきました。

 

そうなると今まで制作してきたHTMLはすべて破棄ということになります。

 

Aさん自身も「50万の仕事」がなくなったのは痛いです。そして1ヵ月間というスケジュールを空けたのに、今さら別の仕事を入れるなんてコトは不可能です。

 

B氏が制作したWordファイルからPDFを書き出せば済むことですが、現状では目次がないので「PDFの書き出し」と「PDFの目次制作」を改めて依頼するので、その見積りを出してくださいという要求になりました。

 

そこでAさんは

「PDFの書き出し」と「PDFの目次制作」・・・2万円

「ホームページ制作のキャンセル」・・・10万円

という見積りを算出しました。

 

すでに前金で25万円頂いているので、13万円の返金をさせていただくことをメールにて連絡しました。もちろんキャンセルについての説明(全体の4分の1ほど制作していたからなど)も付け加えてあります。

 

 

 4. B氏から「お怒りメール」

 

見積りと返金のメールをしたその日に「お怒りのメール」が届いたそうです。

 

B氏が言う理屈は下記の通りです。

 

「キャンセル料金の話なんか聞いていない」
「そっちが制作の前に説明しなければならないはずだ」
「もうPDF制作の依頼はしない」
クーリングオフなどの法律で消費者は守られている」
「キャンセル料金は無効だから全額返金しろ」

 

だいたいこんな感じだそうです。

 

まずAさん自身が運営するホームページには「キャンセルについて」記述があります。

 

まぁよくあるテンプレ文章なのですが、

「キャンセルの場合はホームページ制作の進行具合によってキャンセル料金が発生します。例として半分まで制作した段階でキャンセルされた場合はお見積りの50%のキャンセル料金となります」

みたいな感じです。

 

Aさんは自分のホームページに記載があることや、クーリングオフは無関係などという内容のメールを丁寧な文章で送りました。

 

そのままメール返信がなく数日後B氏から『内容証明郵便』で、「全額返金しろ〜」という内容の手紙が届きました。その中にはたぶん自分で調べたであろう『民法第●条〜』なども書かれていたそうです。

 

B氏が法律の話しを持ち出してきたので、Aさんは弁護士に相談することにしました

 

Aさんとしては「違法なことは一切やっていない」という考えですが、一応念のために法律の専門家に相談したほうが良いという考えです。

 

※個人的に不思議に思うのですが、相手のB氏はホームページ制作をやめて、PDF制作に切り替えたことについて、すべて無料(タダ)だと考えていたのでしょうか?

「やっぱり途中までホームページ制作していたんだから、その分は支払います」

という考えがまったくなかったのでしょうか?

まだ何も作業をしていなくて「相談・打ち合わせの段階だったら料金が発生しない」という理屈ならわかりますが、現実的に時間・技術・知識を使って進めちゃっているんですよ。

 

 

5. 仕事上のトラブルは弁護士に相談すると決めていました

 

実はAさん宅の近所に弁護士事務所があって、「仕事上で何か問題が発生したら、ここに相談しよう!」と独立時に考えていたそうです。

 

Aさんは『内容証明郵便』を含め今までやりとりしたメールをすべて印刷、そしてどのような状況なのかを簡易的にまとめた文章を作成して、弁護士事務所に連絡してアポを取り、相談に行きました。

 

弁護士さんは40歳前後ぐらいの女性で、Aさんの説明と用意した書類を拝見しました。

 

弁護士さん「う〜ん、この人はアホだな。そんな都合のイイ法律なんかねーちゅうねん!」

 

なんとまあ・・・気さくな弁護士さんです(笑)!

 

弁護士さん「キャンセル料金の発生についてはまったく問題無いし、金額的にも妥当です」

 

やはりAさんが正しいという判断です。

 

弁護士さん「それでもやろうと思えば相手は訴訟を起こすことができます。まだ相手は弁護士に相談してないみたいだけど・・・まぁこの内容だと普通は弁護士が裁判をやらないように進言しますね」

 

詳細は省きますが「B氏が裁判を起こせばキャンセル料金の一部返金になる可能がある」とのことです。

憶測ではありますが、裁判で難癖つけてキャンセル料金10万円を「5万円にしろ!」というような感じだと思います。

 

ただしキャンセル料金が10万円ですから弁護士費用などを含めた裁判費用を考えると一部返金ぐらいでは大きくマイナスになってしまいます。だから相手が弁護士に相談したら「裁判やらないほうが得策ですよ」というのが一般的なんだそうです。

 

弁護士さん「こちらからも内容証明郵便でお手紙を出しましょう!私が書いて郵送すると別料金がかかるので今から言うことをAさんがメモして、それを郵便局から送ってください。それ以外はAさんから電話もメールしない、相手からの電話・メールなどの連絡はすべて無視してください」

 

というワケでAさんは内容証明郵便を出して、その中に書いてある日付通りに『25万円(前金)ー10万円(キャンセル料金)』の15万円をB氏の口座に振り込みました。

 

一応万が一に備えICレコーダーを準備して電話がかかってきたら録音できるようにスタンバイしておいたそうですが、その後B氏から連絡は一切ないそうです!

 

いや〜、なんだか勉強になりました。

 

仕事上のトラブルは法律が関わってきますので、弁護士さんに相談・依頼するのがベストです。ちなみに弁護士相談料金は5,000円/30分で1時間ぐらい対面相談したので、1万円だそうです。もちろん弁護士相談料金は経費として計上できますので、キチンと会計ソフトに入力しましょう!

 

ちなみに「ホームページを見て消費者が制作依頼した」というのはネット通販という扱いになり、AmazonYahoo!楽天などでポチるのと同じようなモノなんです。

 

クーリングオフ制度』って勘違いされやすいですが、基本的にはネット通販には適応していません。

 

しかし条件付きで購入者理由によるキャンセルや返品など受け付ける場合があります。

 

ネットショップによって条件は異なりますが、比較的まともな多くのネットショップが対応してくれます。

 

今回のケースでは

 

「B氏の個人的な理由による一方的なキャンセル」

 

「PDF制作はホームページとは別の物なので変更ではなく、新規の依頼になる」

 

「Aさんのホームページにはキャンセルについて法律上問題のない記述があり、キャンセル料金についても妥当な金額である」

 

という部分がキモになります。

特にホームページの制作でAさんに過失などはなく、B氏と相談して要望通りに進めていたにも関わらず、B氏が一方的にキャンセルしたという部分なのですが、B氏はキャンセルだと思っておらず、あくまでも変更だと思っていたところが甘かったようです。

 

例えば印刷屋さんにA4チラシ印刷を1000部依頼して、200部刷り上がったところで「A4チラシはいらないので、名刺100枚の印刷に変更してください」と言っているようなものです。

 

まぁ上記のような印刷の場合はキャンセル料金は100%になると思いますけど(笑)!

 

Aさん自身の対応はすべて法律上まったく問題なく、前金をもらっていて良かったと思います。

 これが「納品後の後払い」だったら逆に訴訟を起こさなければならず、そうなるとAさんがマイナスになってしまうため弁護士さんから「マイナスになってしまうので裁判をやらないほうがイイ」と言われていたはずです。

 

 

ちなみにウチも個人の方から電子書籍の制作を請け負う場合は、『全額先払い』です!

修正や追加などで別途料金が発生した場合は、その都度相談させていただき、料金の支払をお願いしています。

 

さすがに個人様だとまず50万円なんて金額にはなりませんけど。