電子書籍・デジタル版のマンガはなぜ高いのでしょうか
先日友人の娘さんに貸した『進撃の巨人』が無事返却されたました(ほっ)。
娘さんが格安(もしくはタダで:笑)で『キングダム』を読みたいようだったので、一応レンタルをオススメしておきました。
まぁ漫画喫茶やインターネットカフェなども安く読める環境ではあるのですが、『キングダム』が置いてあるかどうかは店に確認するしかありませんから・・・。
娘さん「それにしても電子書籍って高いですよね。紙の本よりもっと安くならないんですか?」
そーなんですよね!コアな漫画ファンの方は別にして、新たに興味を持った方や暇つぶしに漫画を読みたい方にとって漫画コミックはちょっと高い買い物なんですよね。
電子書籍の場合、個人的には漫画コミックなんかだと半額ぐらいでいいんじゃないかなぁ〜と思います。
※漫画に関わる仕事をされている方、ホント大変申し分けありません。。。
以前から「印刷本と電子書籍はまったくの別物」という考えが漠然とあったのですが、まぁそこまで出版業界だけにどっぷり浸かっているワケじゃないので放置していたのですが(笑)、そろそろちゃんと考えてみようと思います!
まず印刷本、つまり紙の本が定価500円/冊(200ページ)だとします。
↑こちらを参考にさせていただきました。
調べてみたところだいたい下記のような分配になるようです。
●書店や取次などの流通・・・30% 150円
●出版社内の人件費・・・・・35% 175円
●DTP印刷製本・・・・・・25% 125円
●著者印税・・・・・・・・・10% 50円
初版だと最低でも三千冊ぐらいは印刷されて書店に並ぶものなのですが、計算が面倒なので一万部とします。
●書店や取次などの流通・・・30% 150万円
●出版社内の人件費・・・・・35% 175万円
●DTP印刷製本・・・・・・25% 125万円
●著者印税・・・・・・・・・10% 50万円
ん?何かおかしいですよね。
「書店や取次などの流通」と「著者印税」は良しとして、「出版社内の人件費」「DTP印刷製本」ってちょっと高額すぎるような気がします。。。
※DTPに関しては漫画と文章主体の小説や実用書では結構差があります。
そもそもこのパーセンテージというのが間違っているんだと思います。
なんで「出版社内の人件費」と「DTP印刷製本」をパーセンテージで表す必要があるのでしょうか?
正しくはこのようになるんだと思います。
●書店や取次などの流通・・・30% 150万円
●著者印税・・・・・・・・・10% 50万円
DTP印刷製本料金は実費になりますので、おおよそ100万円ぐらい(新書判113×176ミリ)。
500万円ー150万円ー50万円ー100万円=200万円
出版社の儲けが200万円ということになります。
この200万円から人件費や広告費などの経費をやりくりすることになるだけですね!
それでは電子書籍の場合はどうなるのでしょうか。
上記リンク先だと電子書籍は原価が高いみたいなことが書いてありましたが、そんなことはありません。
※印刷本があることが前提となっています。
電子書籍も定価500円/冊(200ページ)だとします。
●電子書店や電子取次の流通販売・・・30% 150円
●著者印税・・・・・・・・・・・・・10% 50円
上記の金額は1冊売れるごとに発生します。
500円ー150円ー50円=300円
出版社の儲けが300円/冊ということになります。
ePUB制作費は5,000円(フィックス型)ぐらいなので、出版社の経費、初期投資費用となります。
ということは経費分(ePUB制作費)だけを見ると17冊ほど売れればペイできるので、17冊以降の販売分が出版社の儲けとなります。
※ちなみにリフロー型(小説・実用書など文章主体)というePUBの制作費は時間がかかるので、制作料金も跳ね上がります。ページ数や内容にもよりますが、1冊あたり3〜5万円ぐらいかかります。
出版社側の人件費(時間)もそれなりにかかりますが、電子書籍(コミック)1冊あたりせいぜい20分ぐらいでしょう。
出版社側(編集者)の仕事は
1. ePUB制作に必要なデータを整理して制作会社に送る(校了している印刷データのPDFを送るだけ)
2. 完成したePUBデータの校正(ページ抜けがないか調べるだけ)
3. あらすじや必要な情報を記入して電子取次業者へ送る
おおまかですが、だいたいこんな感じです。
販売サイトやビューワアプリなどの管理は電子書店の役割ですから、出版社は自社サイトでバナー広告を出したりするぐらいしかやることはありません(電子書籍の「あらすじ」や情報などの記入とかありますけど)。もちろん自社サイトのバナー広告などはWEB担当部署がやるでしょうから、編集者がやることはほとんどありません。
もし半額の250円で販売した場合はePUB制作費が変わらず、その他すべてが半分になります。ePUB制作費の経費分がペイできるのは34冊ってところですね。
問題としては『電子書籍(デジタル版)を半額にしたら2倍以上売れるのか?』ということと、『印刷本の売れ行きが悪くなる可能性がある』ということじゃないでしょうか。
印刷本が売れなくなってきているのであれば発行部数を減少させれば良いだけで、今以上の右肩下がり状態を緩やかにさせることができる可能性があります。
そして・・・正直なところ電子書籍で2倍以上売れる可能性は極めて少ないと考えています。やはり海賊版サイトのように「閲覧無料」じゃないと倍増することは無いです(海賊版サイトを肯定しているワケじゃないッス)。
人気小説などで最初『ハードカバー』で出版して数年後『単行本』として値段を下げて出版するというケースがよくあります(漫画などもあります)。このパターンを派生させた形が電子書籍でもイイんじゃないでしょうか。
結局電子書籍って『個人で読む権利を購入する』という代物です。
印刷本は購入後ヤフオク・Amazon・メルカリなどで販売したり、ブックオフなど買取業者に買取ってもらうことができます。友人に貸してあげたりプレゼントしたりなんてこともできますよね。
基本的に電子書籍は読み終わったら古本として売ることはできませんし、友人らと貸し借りなんてできません(家族間なら可能なケースもあります)。
まさか1ページずつスクリーンショットを撮ってPDFにまとめて友人にプレゼントしてませんよね(違法です:笑)?
電子書籍の持ち主が亡くなった場合は財産でも資産でもなくそのまま消滅です。
だから電子書籍と印刷本はまったくの別物なんです!
まったく違うものなのに値段がほとんど変わらないというほうが変ですよね!
この問題については各出版社のビジネスの考え方によるので、私ごときが何か言える立場じゃないのは理解しています。ただ別物である以上は値段もそれなりに精査する必要があるんじゃないかなぁ〜と考えています。
もっと検討する価値は十分にあると思いますよ〜!
出版科学研究所は2月26日、2017年の電子コミックスの推定販売金額が紙のコミックス(単行本)を初めて上回ったと発表した。紙のコミックスが前年比14.4%減の1666億円と大きく落ち込んだのに対し、電子コミックスは同17.2%増の1711億円と成長した。
すでに電子書籍のほうが売れている状態です。
このまま2018年以降も同じ状態が続くとは断言できませんが、各出版社は電子書籍の漫画のほうにシフトしていく条件が揃いつつある状況です。
要するに印刷本の発行を減らして体力を温存し、電子書籍の販売に力を入れるということです。
発行部数を減らすと印刷関連・著者印税・書店・取次などの流通費などを抑えることができます。
読者A「印刷会社や書店や取次が潰れちゃうんじゃないの?」
時代の流れである以上仕方ないケースが多々あります。例えばレコード店やデパート(百貨店)が続々と閉店してますよね。企業である以上は経営者が考えることであり、一般の方が心配するようなことじゃないと思います。書店がなくなって不便になると思う方もいると思いますが、その場所で需要が少なくなれば閉店するのは必然です。
読者B「著者印税が少なくなると漫画家さんが食っていけなくなるんじゃないの?」
100万部を越えるような大ヒット作をいくつも持つ漫画家さんは別にして、年間1万部〜5万部ぐらいの漫画家さんは大変だと思います。鈴木みそ先生のように商業誌をヤメて個人で漫画を描いてKindleで販売するという方法も良いかもしれません。
↓こんな感じで、出版社を通さずに漫画を販売することができます。漫画を描く以外のこともすべて自分でやれば、そのぶん収入が増えますよね!
現状では下記のような状態なのです。
紙と電子を合わせたコミックス市場は3377億円(0.9%減)。コミック雑誌を含めたコミック全体では、4330億円(2.8%減)だった。
コミック全体(雑誌を含む)の販売金額は、紙が2583億円、電子が1747億円とまだ紙が上回っている。だがコミック誌においては紙が激しく落ち込んでおり、電子が補えていない状態だ。
電子書籍の漫画がバカ売れしているワケじゃないんです。
全体的に印刷本の売上が激減しているだけなんです。
出版業界全体が落ち込んでいるんですよね〜。
とくに雑誌が売れてないです。
本屋さんが減少している状態で頼みの綱はコンビニです。しかしコンビニでも年々雑誌が売れなくなってきている状況を考えると先日エントリーした『マガジン☆WALKER』のやり方が正しいのかもしれません。
主に角川系列のマンガ雑誌が中心となってラインナップされている「月額500円で読み放題」というサービスです。
漫画以外の雑誌に関しては楽天マガジン(月額380円)・dマガジン(月額400円)などにも代表されるように、「印刷本が売れないのであれば読み放題サービスで収益を上げていく」という方向性にシフトしています。
ということは漫画の雑誌やコミックも「読み放題サービス」「レンタル」「大幅な値下げ」などに対応する必要があるように思えます。
そう言えば音楽ビジネスや映像ビジネスも大きく変化してますよね。
音楽ビジネスはレコード・カセットテープ→CD→ネット配信と変化してきましたが、年々売上が落ちてきて、今では『音楽聴き放題』という定額制のストリーミングサービスがメインです。
映像ビジネスも映画・テレビ→ビデオ・LD→DVD・BR→ネット配信(レンタル)と変化してきましたが、今ではAmazonプライム・Netfix・dTV・Hulu・DAZNなど定額制の『映像見放題』がメインとなってきています。
こう考える『出版業界だけが時代遅れ』と言われても反論できないような気がします。
出版業界以外の『自宅での暇つぶしサービス』はホント充実してますよね〜!
よくある電子書籍のサービス(宣伝方法)で『1巻は無料であと10巻までは購入してね』というようなことがありますが、あまり効果的ではありません。
読者A「無料で読んだ1巻が面白かったので、続きが読みたいなぁ。よし、2〜10巻まで購入しよう!」
読者B「無料で読んだ1巻が面白かったので、続きが読みたいなぁ。でも買うほどじゃないから海賊版サイトで読もうかな」
読者C「無料で読んだ1巻が面白かったけど、お金を出してまで続きを読むほどじゃないからもういいや」
あくまでも一例ですが、読者Bと読者Cのようなユーザーが圧倒的に多いのが現状なんですよね。
読者Aのような優良ユーザーが減少しているんです。
ちなみに読者Bのような方は海賊版サイトが無くてもほとんど購入することはありません。
結局のところ出版業界が絶好調だった20〜30年前と現代では収入がほとんど変わらないのにライフスタイルがまったく違うんですよね。
例えばプロ野球は地上波でほとんど放送されなくなりましたよね。
昭和の時代では圧倒的な人気を誇っていたのに、今ではテレビ観戦するのにDAZNを契約しないと見れません。少年野球人口も激減している現状では、この先再びプロ野球が超人気スポーツとなることはまずありません(地上波のゴールデンタイムで生放送されるようにはならないという意味です)。
出版業界も野球と同じく20〜30年前までのようなバブリー状態になることはもう二度とありません。
もちろん各出版社ではいろいろ考えているんだと思いますが、今いる漫画ファンを大事にしてもらうのは当然として、新規に「たま〜に暇つぶしに漫画を読む人」を増やしていってもらいたいと思います!
ある程度のマンガ雑誌や漫画コミックは定額読み放題サービスに対応して、コミックは1冊あたり250円〜300円ぐらいが妥当なんじゃないでしょうか(印刷本が500円〜600円ぐらいとして)。。。
それと『電子書籍レンタルサービス』も普及していくとイイなぁ〜と思います。
詳しいことは知りませんが、↑これも出版社や著者に還元されるのですよね?
初期投資はちょっとかかりますが、各出版社のサイトでレンタルサービス(貸本)をやってもイイんじゃないでしょうか?
※漫画家さん個人でKDP出版される場合は、Kindleの読み放題「kindle unlimited」に登録しておくと結構読まれるので収入増になります(KENP)!
結局コレが海賊版サイト撲滅対策のひとつになるんじゃないかな〜・・・と思う今日この頃です。